2019年9月1日に八戸市立市民病院は日本脳卒中学会より「一次脳卒中センター」に認定されました。「一次脳卒中センター」とは、地域の医療機関や救急隊からの要請に対して、24時間365日脳卒中患者を受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師が、患者搬入後可及的速やかに診療を開始できる施設のことをいいます。
当院の脳卒中診療に関わる医師は、2021年1月の時点で、脳神経外科2名、血管内脳神経外科1名、脳神経内科2名、救命救急科18名と多く(うち脳卒中専門医4名、脳卒中の外科学会技術指導医2名、脳血管内治療学会指導医1名、脳血管内治療学会専門医1名、脳血栓回収療法実施医1名)、多診療科が連携し県内一のマンパワーを生かした脳卒中診療が当院の最大の強みです。多診療科による脳卒中カンファレンスを毎朝行っており、また看護師、リハビリテーション療法士、地域連携室などの多職種カンファレンスも定期的に行っており、質の高い脳卒中医療が提供できるよう努力しております。
当院が力を入れてきたドクターカー、ドクターヘリによる病院前診療は、脳卒中患者の治療にも極めて有用で、特に一刻を争う急性期脳梗塞治療には威力を発揮します。患者の搬送中に診察、治療の準備を行うことにより、来院してから治療開始までの劇的な時間短縮に成功しております(図1)。2017年4月から2019年3月の期間に当院に救急搬送され脳血栓回収療法が行われた連続71症例の検討では、ドクターカーあるいはドクターヘリによる病院前診療が行われたのが62例(87.3%)あり、来院からrt-PA静注療法開始まで15分、脳血栓回収療法開始まで38分(ともに値は中央値)は国内トップクラスの早さでした。その結果、有効再開通率90.1%、日常生活自立した転帰良好患者の割合が53.3%と、非常に良い治療成績を出すことができています。急性期脳梗塞治療は発症から1分でも早く治療を行うことにより転帰良好となる患者が増えます。「脳梗塞患者の人生は分単位でかわる」を合言葉に当院では病院前診療から緊張感をもって脳卒中診療にあたっております。
当院は日本脳神経血管内治療学会指導医が在籍し、症例数も多いため、基本診療科の専門医資格を有している医師は、当院で1年研修すれば脳血管内治療専門医の資格取得が可能となります。現在、救急科医師2名が研修中で、1名は脳血栓回収実施医の資格を取得、次回脳血管内治療専門医試験受験予定、もう1名は次回脳血栓回収実施医申請予定となっています。
左は治療前脳血管撮影前後像(矢印は閉塞部位)、右は治療直後の脳血管撮影前後像(矢印は再開通した部位、下は使用したステントリトリーバーと回収した血栓、
来院からt-PA投与まで12分、血栓回収療法開始まで32分、再開通まで46分
発症から再開通まで79分
第7病日神経症状ない状態で自宅退院